事前課題[後編]/Shota Minakawa
後編です。
ここからは具体的な空間のディテールについて報告したいと思います。
「空間の特性」について
まずは「空間の特性」についての分析です。
印刷工場から様々な機能が集合した複合施設にコンバージョンした事で、最も変化が見られるのは利用者です。多くの利用者にとっての受け皿となりえる建築として、どんな特徴が空間にあるのか見ていきます。
4.通路寸法/照明/室空間分析
地下1階 3282mm / 1階 2968mm / 2階 4000mm / 3階 3800mm / 4階 3800mm
旧棟と新棟を繋ぐ廊下 廊下とメイン空間との中間 メイン空間
天井高さは各階によって異なっていますが、廊下の天井の設備空間を敢えて見せているという共通点があります。またその設備空間の真下にうっすら隠れるようアルミ版を設置し、その間から光が落ちるよう照明機器を設けています。廊下の天井を敢えて低く見せる事で、テナントなどのメイン空間に入った瞬間に
ダイナミックな視覚的効果が期待できるのではないかと思います。
メイン空間:http://www.tabloid-tcd.com/gallery
TABLOIDのにおいて最大の特徴は輪転機が入っていた4層吹き抜けの大空間です。元の吹き抜けを旧棟と新棟の改修により2分割にしても尚、大きい方は幅約10m、奥行き30m以上あり、高さは15mもあるそうです。
改修前の吹き抜け空間 改修後の吹き抜け空間
イベント空間の様子:http://www.tabloid-tcd.com/placeoffer
この大きな吹き抜けを若いアーティスト向けのイベント会場などとして活用する事で、
都市に対し開かれた空間として生まれ変わるのではないかと思います。
6.動線分析
かつての工場の搬出入口は開口を設ける事で内部空間にし、且つ正面にはオープンテラスを新設する事で、南側採光が十分に入るカフェになりました。正面側には人を呼び込む動線ができ、背面側には車の動線がまとめられるよう計画されています。利用者にとってより利用しやすいような配慮がなされており、
都市空間と建築空間との連動性を上手く創出していけると思いました。
「インフォグラフィック」について
次に「インフォグラフィック」な要素についての分析に入ります。
どんな情報を分かりやすく伝え、何を可視化しているかについて見ていきたいと思います。
今回はその中でも内部空間と外部空間の素材に着目しました。
8.素材分析
踊り場 フロアマップ
内部空間は石膏ボードによる仕上げを施しています。
特に面白いのは踊り場で、本来あるはずの手すりの下の支え柱が取払われており、背後には空間を広く見せるようように壁のコーナーを囲むような形で階数を示すロゴがペイントされています。またフロアマップが周辺設備と違和感なくとけ込むように描かれています。
自分は視覚的な空間の仕掛けがあるのではないかと思いました。
南西側の外観(遠景) 南西側の外観(近景)
首都高とゆりかもめの路線に挟まれたこの土地には、騒音や排気ガスといった問題点が挙げられます。
これらの問題点に対し、南西側の外観壁面には、高架下から見える視界にそった部分にのみ、サインアートが施されています。しかもこのウォールペインティングは全て手描きによるものだそうです!ネガティブなイメージが混在する環境を考慮し、新たな風景を形成した表現方法として、都市に対する強いメッセージ性を感じました。
9.まとめ
今回取り上げたコンバージョン建築「TABLOID」は、建物単体だけでなく、周辺環境と共に「空間の価値」を高めていく事ができた貴重な事例であると思います。そしてこの土地の持つポテンシャルを最大限に活かす方法として、「視覚に訴えかけるような要素」が存在し、空間のディテールと対応していく事で、新たな建築が誕生したのではないでしょうか?
長くなってしまいましたが、これで事前課題の報告を終わります。
そして投稿が遅れてしまい本当に申し訳ありませんでした!
そして本当にたまたまネタが被ってしまったという事は、現代における「建築の可能性」がTABLOIDには沢山含まれていたのでは?という事にしておこうと思います。(言い訳にしか聞こえませんねw)
上海楽しみです!1ヶ月頑張ります!