事前課題[前編]/Shota Minakawa
皆川です。
投稿が遅れてしまい申し訳ありません!事前課題「身近なコンバージョン建築」の報告をします。
自分は筑波に来てから東京へ出かける頻度が増えました。今回は自分の関心分野に最も近い事例として東京都港区の沿岸部に建つ「TABLOID」を取り上げようと思います。
工場を改修し、複合施設となった事例です。
しかし、なんと!
本年度のサマプロ生でもあり、大学の同期でもあるじゅんちゃんと紹介事例が被ってしまいました!
まさか被るとは。しかも同じ大学なだけに少し複雑です(´Д`;)
...という事なので自分は少し違った側面から「TABLOID」を見ていこうと思います。
前回の内容でロバート・ヴェンチューリの話を少し取り上げ、建築の「記号性」について触れました。また自分の設計理念として世の中の未だ着目されていない様々な要素を意識し、それらを空間に落とし込む話も書きました。TABLOIDは単なる工場の改修事例ではなく、今までにない建築の可能性を強く感じさせてくれる沢山の要素があると思います。
今回自分が選んだコンバージョン事例が魅力的に見える理由を以下にまとめてみました。
・「土地のポテンシャル」と「空間の特性」が都市に波及効果をもたらしている
・「インフォグラフィック」な要素が空間のディテールと対応している
TABLOIDは元々タブロイド紙の印刷工場だったという歴史があります。また湾岸エリアという立地条件からこの土地独自のポテンシャルを持っています。
因に「インフォグラフィック」とは情報を分かりやすく人に伝えるカタチに可視化したものです。
自分は TABLOIDのディテールがこの要素と密接な関係があるのではないかと考えました。
「空間の特性」、「インフォグラフィック」な要素に関しては後編で触れたいと思います。
1.概要
TABLOIDは2008年3月まで「夕刊フジ」の印刷工場でしたが、改修により新たに複合施設として甦りました。周辺は東京臨海新交通臨海線の日の出駅前に位置しており、交通の便が良いものの、騒音の鳴り止まない沿岸部というこの土地は、住宅やオフィスとしての人気エリアではありませんでした。
敷地周辺の分布図
しかし周辺エリアにはフジテレビジョンや大手出版社の扶桑社、電通などの情報発信企業が多く存在し、取引先となるクリエイティブ系の企業が集積しやすい場所になっています。結果としてこの土地のポテンシャルを上手く活かし、TABLOIDは1つの建物の改修にとどまらず、湾岸エリア一帯をバリューアップする事ができました。
2.基本データ
基本データは以下の通りです。
名称: TABLOID
所在地:東京都港区海岸2-5-6
地域・地区:準工業地域
主要構造:RC造(一部S造)
階数:地下1階、地上4階、塔屋1階
竣工年 既存:1969年(旧棟)、1988年(新棟)/改修:2010年
企画・トータルプロデュース:リビタ
基本設計:建築→OpenA / SEA Desin/構造・設備→ SEA Desin
実施設計・施行:北野建設
敷地面積:1660.88㎡
建築面積:1314.36㎡
延べ床面積:4380.64㎡
建ぺい率:60%
容積率:400%
工事種別:建築、内装、外装、設備
用途:改修前→工場/改修後→複合施設(事務所、スポーツ施設、写真スタジオ、ギャラリー、飲食店等)
駐車台数:月極2台 共用3台
3.設計手法分析
改修前平面図 改修後平面図
既存の工場は2段階で建設されました。1969年竣工の旧棟、1988年に北側に新棟を増築し、エキスパンジョイントでつなぐ事で往来が可能となります。
内部から見た様子です。旧棟と新棟を繋ぐ廊下自体は既存のままですが、壁には 遊び心を取り入れたロゴが書かれています。
3.MD分析
TABLOIDは「建物そのものを情報メディアに」というコンセプトのもと、改修を最小限にとどめ、運営面を差異化させる事で付加価値を高めるような工夫がなされています。企画担当のリビタをはじめ、運営者である産経新聞が運営者としても関わる仕組みづくりにより、新たな情報発信基地になりました。
TABLOIDのプロジェクトチームは以下の通りです。
引用:http://www.tabloid-tcd.com/concept
後編には具体的なディテールの分析について書ていきたいと思います。